55歳からのハローライフを読んで歳をとるのが怖くなった


55歳からのハローライフ written by 村上龍

 

リタイアした50代のセカンドキャリアを描いた短編小説が5本収められている。

 

それぞれの主人公は富裕層、中間層、貧困層に分けられる。

 

その中でも貧困層はこの金が無くなったらホームレスになるしかない、というくらい貧乏だ。だから素手でカラスを捕まえて唐揚げにしたり、水道代をケチって雨水を飲んで、体に新聞紙を巻きつけて寒さをしのいでいる(後半は嘘)。

 

「ジョニーは金持ちで、キャサリンは貧乏だ」と聞いて、何を思うだろうか。

 

僕は金持ちだ。ロールスロイス以外の車は三輪車と同じだと思っている。金が余ってどうしようもないので、ティッシュの代わりに一万円札で鼻をかむ。金髪に染める時は髪の毛に金箔を練り込むくらいだ。生まれた時からウニいくら丼とキャビアを毎日食べていたら「世界一若い痛風患者」と呼ばれるようになった。だから金持ちのジョニーがどんな生活をしているのか大体想像できる。

 

でも貧乏なキャサリンがどんな生活をしているのか見当もつかない。金が無い人はどんな生活をしているんだろう。街頭に立ってマッチ棒を売っているかも知れない。あるいは奥羽山脈のある洞窟で山猿の群れに混ざって生きているのだろうか(ウッキー)。

 

僕は金に不自由する生活を具体的にイメージすることができない。貧困層はどんな日常を送っているのか想像することさえ困難だ。

 

でもこの小説が貧困層の具体的な生活を教えてくれた。自分が知らない世界を観測できるのは小説を読む醍醐味のひとつである。

 

僕は今年20歳だ。主人公たちの年齢である55歳になるまであと35年かかる。

 

35年というのは僕が10歳から20歳になるまでにかかった時間の3.5倍だ。このままだと気がついたら55歳でした(΄◉◞౪◟◉`)みたいな感じになりそうだ。

 

55歳という年齢にふさわしいスキル、経験、知識を身につけておかないと相当に悲惨だと思う。

 

僕はわからないことがたくさんある。要するに無知でまだ子供なのだ。レベル5のモジュラー方程式の解の求め方がわからない。源氏物語における建造物の構造を把握できない。「確かにあなたはいい人だけど、好きになれないの」と言われた理由がわからない。パチスロで勝つ方法も、ブラック企業の平社員をやっている父親が涙を流しながら煮干しをしゃぶっていた理由もわからない。

 

でも僕はまだ若い。だから無知でも許容される。あるいは技術が不足していても、若いから当たり前だ、と思われる。

 

でも今の僕がこのままの状態で55歳になったら相当ヤバイ。パンツ一丁で南極大陸を横断するよりも大変だ。

 

無知でも許される期間はもう長くない。あと2、3年だろう。この事実を認識して、頑張って勉強しようと思った。具体的には大学を卒業するということだ。

 

 

55歳からのハローライフ (幻冬舎文庫)

55歳からのハローライフ (幻冬舎文庫)