山小屋バイト日記 

やあ久しぶり、浄化槽に沈められていたのかい?少しは心が綺麗になったかしら?

 

山小屋でバイトしていたんだよ

 

ふーん、山猿の脳みそを吸って、熊の心臓を食って生活していたんだろう?ロクに食い物なんてないだろうからな。

 

バカ言え。食べ物はヘリで上がってくる。

 

山小屋は食い物がなくて、野生動物を捕まえるか、渓流で魚を釣るとかして、タンパク源は現地調達を余儀なくされ、水と米はまるで使役馬のように歩荷、野菜の代わりに木の葉を食べる、みたいなまるで、旧ソ連の強制位収容所のような食生活を連想するものが多いが、それはガセネタさ。

 

ただ、小屋に材料が置いてある、というだけだから、それを調理するのは山小屋のスタッフだよ。で、料理が上手なスタッフと同居できれば、鶏肉の香草焼きとか、チーズグラタン、きのこあんかけハンバーグなど、気合い十分な料理が出てくる。サーターアンダギーとか、かぼちゃクッキーも作ってくれた。

 

でも、料理できない、というか美味しい料理を作ろうという意思の無い者と同居すると、食卓が避難所の炊き出しよりも残念な有様になってしまう。

 

本当にひどい時は、ご飯のおかずが、マヨネーズときゅうりだったんだ。面倒だから、ご飯にストロングゼロとマヨネーズとソースをぶちまけていた者もいたよ。尋常ならざる夕食さ。彼は「胃の中で混ぜるか、丼の上で混ぜるか、それだけの違いしかないんだぜ?」と言っていたよ。

 

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そうか、小屋に泊まり込んで働くんだな

 

その通りだよ。だから、誰と同居するかは、好きな女の子と同じクラスになれるか、と同じくらい重要なんだ。小屋の規模次第だけど、一つの小屋に2〜10人のスタッフが常駐している。フリーランスの登山ガイド兼、山小屋のスタッフ、という人もいたよ。

 

どんな人が山小屋で働いているんだい?繁忙期はメスゴリラの手を借りるのかい?

 

そうだな。25歳から35歳くらいの人が多かったよ。新卒、というかファーストキャリアが山小屋、という人もいるし、前職が警察とか栄養士、(覚せい剤の密輸)商社という人もいたよ。季節労働者も¼位いる。

 

男女比は、工学部とか、自衛隊とか、オタサーとか、それと似たような感じ。

 

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「親父に、大学を辞めたい、と言ったら、勘当するぞ!この親不孝者め!、と激怒されたが、大学はもはや腐りかけた権威であり、その程度の物を有り難がる無能力者を父親だと思いたくなかったから、家出して、山小屋で働いているんだ。ここはいい場所だよ」と言うスタッフもいたよ。

 

ちなみに、彼の読書経験はものすごい量なんだけど

 

「コーヒーの注文が入ったら、レトルトカレーをコーヒーカップに盛り付けてお出ししろ」

 

「オナニーは水子作り」

 

「居酒屋行って笑顔で接客されると、この店員、何が楽しくて笑ってるんだろうな、と思わざるを得ない。訓練された犬みたいな笑顔を見ると不愉快になるからそういう接客をするべきではない。そもそも、文脈がない状況で笑顔を作ることに無理があって、それを強制する店長はサイコパスだ」

 

高山植物なんか枯らしてしまえ。お客さんの残念そうな顔が見たい」

 

という、まるで美しいものにゲロを吐くような狂人だったよ。優しいし、仕事も手伝ってくれるし、気が利いて良い人なんだけど、とにかく思考が普通じゃないんだ。わかるかい?あくまでも私見なのだけれど、読書量と思考の特異性は相関関係があるはずだよ。

 

山小屋の仕事はキツそうだな。お前ら、腰の骨が折れるまで働け!みたいな

 

ああ、ここで働くなら、北朝鮮の炭鉱で働かせてくれと思ったよ、なんせ高度2000メートルだ。治外法権労働基準法無視もいい加減にして欲しかったよ、というのは嘘で、山小屋と言っても、本質的には宿泊業なんだ。

 

お客様が泊まる、その準備をする、食事をお出しする、それが全てで、それ以外でもそれ以下でもない。

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ふーん、最後に言い残すことはあるかい?

 

まず最優先に、山小屋は金が貯まる。これはガチで貯まる。山小屋は、実質的に潜水艦みたいな閉鎖環境なんだ。

 

日本円を持っていても、その使い道がない。本当に使い道がないんだ。コンビニも飲み屋も無い。食費も光熱費も、なにもかも要らない。山小屋(というか山の中)で日本円を持っていても、日本でドル紙幣を持っているのとほとんど変わらないんだ。

 

で、金の使い道がないから、給料が貯まる貯まる。

 

それから、景色はマジでいい。朝焼けも夕焼けも星空も、街の夜景も、抜けるような青空も、天気さえ良ければいつでも見れる。

 

美しい景色を見れて、それだけで山小屋でバイトしてよかったと思ったよ。

 

最後に、山小屋は割と自由だった。山だからええやろ、みたいな。

 

先輩に



「下界が自由なら山小屋なんて誰も来ねえんだよ。無駄な礼儀とか悪習を有り難がるバカが多いから、みんな山小屋に逃げてきてるんだろ。自由にやれよ、バカかお前は」

 

と言われたのを覚えている。

 

僕は、平日のお客さんが少ない時は、布団を3枚川の字に並べて、それを横から串刺しにするように、3枚の布団を一人で独占して寝た。そういう布団の使い方は、あるいはもうできないかもしれない。

 

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