キャンプ場バイト日記「ウキウキしながら何しちゃう?」

キャンプ場の短期バイトは基本的に泊まり込みである。一軒家を寮にしていて、他のバイトの人達とシェアハウス、みたいな感じだった。

 

俺は夜の8時くらいにその寮に着いた。のっけからウイスキーをラッパ飲みさせられて、「腹のなかで割れ」と三ツ矢サイダーも飲まされた、というのは嘘で、先輩方がたくさん話しかけてくれたお陰で、サクッと仲良くなれた。

 

寮といえば年上が神のように崇められ、毎日2時間先輩の説法を聞かされ、先輩の機嫌が悪い時は「僕を殴ってください」と自分の身を差し出さなければならないのだと想像していたのだが実際はもっとルーズで、年の差とかはあんまり気にしない雰囲気だった。みんなが揃ってからご飯を食べ始めるとか、順番に部屋の掃除をするとかもなくて本当に自由だった。

 

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俺がその寮に着いた時、「夕飯食べればいいじゃん」と言われたのを覚えている。で、村上春樹は唯一絶対の神のような存在である、とか「頭悪い奴は大学とかに行きよるねんけど」みたいな話をした。

 

寮のみんな熱血・筋トレ漢の集まりで、冗談ではなく本当にみんなよく筋トレをした。「女の子が化粧してるんだから、俺たちは筋肉で魅せなければいけない」と言いなが鬼のような形相で鍛え上げる。バーベルを持ち上げるということに対して並並ならぬ熱意を抱き、「筋肉を鍛える」というタスクに対して真摯に向き合っている。後輩を効率よく痛めつけるために筋肉を体に蓄えているのではないかと少し不安になったが、僕はまだ一度も殴られていない。

 

筋トレをした後はたんぱく質を補給するためにベーコンを焼いて食ったり、豆腐を食ったりするのだが、物質主義的な者は「タンパク質だったらなんでもええねん、これで20グラムや」とか言って、お椀に4つ卵を割ってそれをかき混ぜてごくごくと飲み干していた。その姿はまるで原始人に見えたことは言うまでもない。

 

次の日の朝からお仕事だった。よく晴れた天気のいい日で僕は希望に胸を躍らせた。9時から16時まで仕事だった。午前中はコテージとかキャビンの掃除で、午後はキャンプ場の木を切ったり、場内整備の仕事をした。

 

バイトが終わった後、歩いて海を見に行った。海に岩をぶん投げている小学生とか、座禅をしている修行僧のような爺さんもいた。日が暮れて月が出てくるまでずっと同じ場所から海を見ていた。真っ暗な海から懐中電灯を照らしながら寮に帰り、寮に置いてあるスイッチでスマブラをしたらぼろ負けして、僕は悔しくなってコントローラーを噛みながら壁に額を打ち付けていた。

 

続き

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